研究概要 |
95年度の研究により、Lecithin : cholesterol acyltransferase(LCAT)欠損症患者の遺伝子解析を行い、新しいLCAT遺伝子変異(Asn^5→lle)を明らかにした。 患者は著しい低HDLコレステロール血症(2mg/dl)と角膜混濁、貧血、蛋白尿を示した66才の男性で、LCAT活性は正常の17.7%,LCAT蛋白量は正常の7.9%に著減していた。この患者のLCAT遺伝子の5つのエクソンすべてとエクソン-イントロン接合部の塩基配列を解析し、エクソン1にAからTへの点変異を同定した。これは、LCAT蛋白の5番目のアミノ酸をアスパラギン(AAT)からイソロイシン(ATT)に置換するミスセンス変異(Asn^5→lle)であった。これは今まで報告がない新しい変異である。同部位以外は正常の塩基配列に一致した。PCR産物に制限酵素多型(RFLP)が生じるようなミスマッチを導入したプライマーを作製し、これを利用した分析の結果、患者はA→T点変異のホモ接合体であることが判明した。この変異は正常対照には認められなかった。 患者の血清LCAT活性は正常の約10%前後に低下しているが、LCAT蛋白量にも同程度の低下が見られた。これはほぼ正常な活性を持つLCATが細胞内で合成され、その分泌過程に障害が存在するためと推測される。したがって、患者の変異部位(Asn^5)はLCAT蛋白の分泌に重要と考えられた。 以上の成果は、一部を1996年度日本内科学会総会で発表し、現在英文誌に投稿中である。
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