研究概要 |
1.Vimentinのhead domeinのcdc2 kinase, C kinaseおよびCa^<2+> -calmodulin depenent protein kinase II (CaMK II)にそれぞれ特異的なリン酸化部位を含む合成peptideを、それぞれのkinaseでリン酸化し、peptideのC末端に導入したcystein残基を介してKLHに結合させたものをマウスに免疫して、monoclonal抗体を作製した。 2.作製した抗体の特異性をELISAで検定すると、これらの抗体はマウスおよびヒトのリン酸化peptideとのみ反応し、脱リン酸化peptideとは反応しなかった。 3.FCS刺激下の培養ラットmesangium細胞、ウシ糸球体内皮細胞、ラット糸球体上皮細胞を、各抗体を用いて蛍光抗体間接法で染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。ラットmesangium細胞において(1)cdc2 kinaseを介したリン酸化状態を認識する抗体は細胞分裂前、中、後期に強い反応がみられ、間期の反応は認めなかった。(2)C kinaseのリン酸化部位抗体は間期に比し細胞分裂期に強い反応を認めたが、各期に有意差はなかった。(3)CaMK IIのリン酸化部位抗体は細胞分裂の終、後期に強い反応がみられた。他の細胞もほぼ同様だが、ラット糸球体上皮細胞ではCaMK IIのリン酸化部位特異抗体は、一部の間期に最も強い反応が認められた。 ラットにpuromycin aminonucleoside腎症と片腎摘後の抗Thy1.1腎炎を作成し、上記抗体を用いた蛍光抗体法で経時的に腎組織のリン酸化状態を観察した。両モデルにおいて糸球体上皮と血管平滑筋層に、cdc2 kinaseのリン酸化部位抗体との反応性を認めた。反応は早期病変で強く、時間と共に低下した。CaMKIIリン酸化部位抗体との反応性は、病初期から後期まで持続して認められた。以上よりこれらの抗体を用いて腎構成細胞の動態を観察し得、今後は各kinaseによるvimentinのリン酸化と腎病変への係わりを検討する予定である。
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