ラットの腹膜中皮細胞の培養は成功し、クローン化細胞株を樹立した。実験には3-5継代の細胞株を使用した。クローン化細胞株へのHSP70遺伝子のtransfectは、種々のlipofectin濃度、種々の遺伝子量を組み合わせて行ったが結果的にはtransfectされなかった。lipofectinを用いる方法以外の方法を試みる必要があると考えられた。 クローン化細胞株に糖、D-mannitol、glycerinを用いて高糖負荷、浸透圧負荷を与え培養した。トリパンブルーによるdye exclusion test、培養上清中のLDH放出量、[^3H] thymidineを用いた細胞増殖反応は過去の報告と一致した結果であった。さらに、糖濃度、浸透圧を経時的に上昇させた場合と、一定の糖濃度、浸透圧で培養した場合とで、トリパンブルーによるdye exclusion test、培養上清中のLDH放出量、[^3H]thymidineを用いた細胞増殖反応を比較したが差は認めなかった。また、同じ条件下でHSP70を測定したが細胞障害の程度、細胞増殖反応の程度とHSP70の発現量に相関関係はなかった。本研究の結果からは、HSP70が腹膜中皮細胞に対して保護的に作用する証拠は得られなかった。培養細胞環境におけるHSP70の発現を抑制する因子の検討、また他のHSP familyが同時に発現し何らかの影響を与える可能性を検討すべきであると考えられた。
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