研究概要 |
本年度は、MRIによる画像解析によって、1)大脳各部容積測定法の精度の検討、2)本法を用いた脳性麻痺の大脳各部容積測定を行った。さらに、神経生理学的測定として、3)新生児の深部腱反射の反応時間の正常値とその広がりを測定した。 1)MRIによる大脳各部容積測定法を5体の剖検脳に用いた。測定値とWater displacement法による実測値との百分率誤差は大脳半球では2.15±1.31%、小脳では2.70±1.71%であり、本法は精度が高く脳容積の計測に十分応用が可能であることが判明した。 2)脳性麻痺22例(痙直型13例、アテト-ゼ型9例)の大脳半球容積、基底核+視床容積、髄鞘化白質容積および脳室容積を測定し、すでに報告した正常例の値と比較検討した。痙直型では運動機能障害が高度なものほど大脳半球容積と髄鞘化白質容積が低下した。特に髄鞘化白質容積と運動機能障害との間には有意の相関があった。アテト-ゼ型では運動機能障害と大脳半球容積、基底核容積、脳室容積および白質容積との間に明らかな関係は認められなかった。同程度の運動機能障害をもつ痙直型と比較すると、大脳半球容積と髄鞘化白質容積の減少は軽度であった。 3)正常新生児5名を対象とした。在胎週数は39.5±1.2週、出生体重3,140±350g、Apgarスコアは1分値7点以上であった。打腱器による膝蓋腱の腱打から表面筋電図でM波出現までのM波反応時間は打腱側の大腿直筋、同側腓腹筋でそれぞれ15.3±4.1ms、18.3±3.9msであった。対側の大腿直筋と腓腹筋でM波はみられず、diffuseの存在は明らかではなかった。 以上の結果から、MRIによる大脳各部容積の定量法は、脳性麻痺の脳の形態学的異常を検討するために有効な手段であった。今後、本法をハイリスク児に応用し、新生児脳障害による脳性麻痺の早期発見、早期治療法を確立する必要があると考えられた。
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