研究概要 |
平成7年度の研究成果としては、各種神経系細胞株でのネキシン-1ならびにトロンビン機能的レセプターのmRNAの発現をRT-PCR法を用いて検討した。 ネキシン-1については、プライマーの位置としてC末側の非翻訳領域を含む584bpを選ぶことにより、再現性の高い検出が可能となった。種を越えて、ヒト神経芽細胞腫株のGOTO,SKNSH,SY5Y、ヒト膠芽腫A172、ラット膠腫C6、さらにヒト脈絡叢乳頭腫CRL1600において、ネキシン-1のmRNA発現を確認できた。半定量では、GOTO株において最も多量の発現を確認した。 トロンビン機能的レセプターについては、ヒトのcloningのみ報告されているため、翻訳領域内の856bpを増幅するようにプライマーを設定した。ネキシン-1と同様のPCR条件にて、GOTO,SKNSH,さらにCRL1600において発現を確認した。GOTOにおいては、かなり多量の発現を確認した。ラット膠腫C6では、種の違いからか、検出できなかった。 以上の結果より、上記2種の蛋白の発現制御機構の解析には、ヒト神経芽細胞腫GOTO株が最適であると結論した。グリア系としてラット膠腫C6株を用いる予定であるため、ノザンプロット法にて種の違いを解決したい。さらに、トロンボモジュリンの発現を確認すべく、C末側の非翻訳領域を含む1200bpを増幅するようにプライマーを作成した。 ネキシン-1、トロンビン機能的レセプター、さらにトロンボモジュリンと、トロンビンの受容体と成りうる3種の蛋白の発現制御を解明することで、今後セリンプロテアーゼであるトロンビンとそのインヒビターとのバランスが神経系の発達分化に及ぼす影響を解析していく予定である。
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