研究概要 |
背景:甲状腺腫瘍のなかには濾胞癌のように術前診断が非常に困難なものや、ある種の乳頭癌のように予後に大きな差がでるものなどがあり、手術適応や手術範囲などの治療方針を決定するうえで、これらの鑑別に有用な情報が術前に得られることは、非常に臨床的意義が高いと考える。穿刺吸引細胞診より得た腫瘍細胞より抽出したDNA,RNAを用いて、遺伝子的検索を行い、術前の治療方針に役立てえるかを検討した。 対象:甲状腺腫瘍(甲状腺乳頭癌2例、濾胞腺腫5例、甲状様甲状腺腫8例、橋本病1例)をもつ患者16名より得た22検体を対象とした。 方法:甲状腺腫瘍を持つ患者に対し、従来の経皮的穿刺吸引細胞診(22G針使用)の際、診断用にスライドグラスに塗沫後、針内やシリンジ内に残った細胞を0.5mlの生食で回収、EDTAいりチューブにて-20度で保存した。 対象のため、手術摘出標本に直接穿刺し同様の採取をおこなっ。 回収した細胞は、QIAGEN Blood and Cell Culture DNA KitにてDNAを抽出。DNAを各種primerにて増幅。K-ras,p53,p16についてSSCP,dirrect sequenceにて点変異の有無を検索した。 結果:回収した22検体すべてよりDNAは抽出しえた。また、各々のprimmerにおいてPCRの増幅も施行可能であった。検索したK-ras,p16,p53については16症例、22検体いずれにも点変異をみとめなかった。RNA抽出は現在試行中である。 考察:今回の検討で穿刺吸引細胞診からの細胞で充分に遺伝子的検索を行えることが判明した。今回検索した遺伝子では直接組織型などとの検討は行えなかったが、症例を増やし、また新たな遺伝子にも検討を加えたい。さらにこの手技にてprospective studyも行っていきたい。
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