研究概要 |
当科で1995年に施行した腹部大動脈瘤手術患者を対象に術中,術後の循環血液中のサイトカイン濃度を測定した.血液採取はIt radial arteryから行い,採取時期は(1)麻酔導入後,(2)腹部大動脈遮断中,(3)遮断解除30分後,(4)1時間後,(5)3時間後,(6)6時間後,(7)12時間後,(8)24時間後,(9)48時間後の9点とした.測定項目はTNF,IL-1,IL6,IL8,IL-10,GCSFの各サイトカイン濃度,およびPMN elastase濃度であり,加えてWBC数とその分画も経時的に測定した.結果 1)TNF,IL-1はいずれも経過中ELISA kitの測定感度以下であり,計測不能であった. 2)IL-6,IL-8は大動脈遮断解除後6時間前後に血中濃度がピークとなり以後消褪していった.PMN elastaseもIL-8の動きとよく似た動きを示し,IL-8の濃度とPMN elastaseの濃度との間には相関関係が認められ,血中PMNの活性化とIL-8との間には関連があることが予想された. 3)IL-10は腹部大動脈遮断解除1-3時間後の比較的早期の血中濃度はピークとなった. 4)G-CSFは遮断解除6時間前後に血中濃度がピークとなったが,血中の実際のPMN数は腹部大動脈遮断解除直後から増大し大動脈遮断解除後早期のPMN増加はG-CSF以外の,たとえばLT,TXなどが関与している可能性があるものと思われた.
|