研究概要 |
新しい脂肪栄養素材として、Diglyceride分子内の脂肪酸構成を変化させた製剤であるDiglyceride microsphereの栄養機能学的有用性の検討を行うため、 1)1,3位置固定化リバーゼを用いた酵素法にて、大豆油より分解して得られた各種脂肪酸をグリセロールと反応させて、分子内の脂肪酸を変化させた純度95%のDiglycerideをまず合成した。 2)このDiglycerideをマントンゴーリン高圧ホモジナイザーを用いて精乳化し、微細で安定なDiglyceride microsphereを作成した。 3)作成したDiglyceride microsphereの製剤学的特性は、光散乱法で測定した平均粒子経は0.23μmであり、走査電子顕微鏡(日立S-2300型)による観察結果でも従来の脂肪乳剤と比べて微細であった。 4)Diglyceride microsphereをラットに投与した際の代謝動態を検討した結果、静注した場合には血中および肝での分解代謝は極めて迅速であり、これを経腸投与した場合の空腸からの吸収は、乳剤投与後の血清を超遠心分離法を用いてリボ蛋白分画に分け、各分画中のトリグリセリドと遊離脂肪酸を酵素法による測定法では、従来の脂肪乳剤に比べて極めて早期に、血清中でfree glycerolが増加するという知見が得られた。 5)電子顕微鏡的観察で、空腸および肝で従来の脂肪乳剤よりも迅速に代謝されていた。 以上の研究成果から、Diglyceride microsphereは静脈内投与でも経腸投与でも代謝は迅速であり、特に経腸投与した際には多量に血中に放出されるfreeglycerolも栄養基質として利用できるため、新しい脂肪栄養素材として大いに臨床応用が期待できることが示唆された。
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