研究概要 |
本研究を進めるにあたり、大前提となるのがラットにおける肝移植モデル作成のテクニックの完成である。研究開始前の予想通り、本年度の研究期間の相当期間をそれに費やした。その結果、非拒絶群であるACI系同志の肝移植モデル2例、急性拒絶反応群群であるACI系ラットをドナー、Luis系ラットをレシピエントとした肝移植モデル4例を作成することができた。急性拒絶群は平均して術後6日目に拒絶反応により死亡した。死亡直後に肝組織を採取し、Fibronectine、Tenascin、Laminin、Desmin、α-ActinおよびH-Eを用いて染色した。非拒絶群も急性拒絶群に合わせ、術後6日目に肝組織を採取し、同様の抗体を用いて免疫染色を行った。 Fibronectineを用いた染色では、非拒絶群、急性拒絶群とも中心静脈領域を中心とした色素の沈着が著明であったが、両者の発現に大きな差異は認められなかった。Tenascin染色では、非拒絶群、急性拒絶群ともうまく染色されず、抗体の見直しが必要と考えられた。Laminin染色では急性拒絶群でシヌソイド領域が濃く染色され、非拒絶群の同領域に比べ,陽性と認められる細胞が多かった。Ito cellに対する抗体であるDesminは急性拒絶群において非拒絶群に比し、シヌソイド領域で濃染し、強拡大では突起を出している細胞も観察された。シヌソイド領域でDesminで染色される細胞はIto cellであることが既に示されており、急性拒絶反応時においてIto cellが強く発現していることが確認された。α-ActinはIto cellがtransformした、いわゆるmiofibloblast like cellに対する抗体であるが、これもDesmin同様急性拒絶群においてシヌソイド領域で濃染しており、急性拒絶反応時におけるIto cellの発現が強く示唆された。 今後の課題として、検体数をさらに増やすこと、肝移植後1日目、3日目の肝組織に対し同様の染色を行い、経時的な変化を検討すること、CollagenIV、マクロファージ等に対する抗体を用いて染色を行い、Ito cellの発現とExtracelllar Matrixとの関係につき、更なる検討を進めていくこと等が挙げられる。
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