研究概要 |
【目的】葉酸の活性型誘導体であるロイコボリンは消化器癌化学療法の新手法であるBiochemical Modulation療法において5FUのModulatorとして世界的に広く用いられており,われわれはこの5-FU/ロイコボリン治療の過程で本治療法が肝機能改善作用,黄疸軽減作用を有することを発見しロイコボリン自身に新たな薬理作用があるのではないかと考え、ロイコボリンの肝機能,減黄作用のメカニズム解明の実験的検討を行った. 【方法と結果】(1)胆汁生成量,胆汁中胆汁酸濃度に与える影響 手術的にラット総胆管にポリエチレンチューブを挿入し総胆管外瘻を作成しBollman Cageにて飼育,12時間ごとに胆汁量および胆汁酸濃度を測定した.手術後24時間目に腹腔内へロイコボリンを投与したロイコボリン投与群と腹腔内生理食塩水投与の対照群を比較すると,対照群では胆汁生成量は経時的にほぼ直線的に減少していくのに対してロイコボリン投与群では投与後12時間目,36時間目で胆汁量の増加が認められ胆汁中総胆汁酸量は投与後36時間目でロイコボリン投与群で有意に増加した(p=0.019). (2)肝7α-hydroxylaseのmRNA発現に与える影響 7α-hydroxylaseは肝臓におけるコレステロールから胆汁酸生成の律速酵素である.ラット腹腔内にロイコボリンを投与し2日後に肝臓を摘出しAGPC法によりRNAを抽出し7α-hydroxylaseのcDNAプローブを用いてノーザンブロッティングを行ったところmRNAはロイコボリン投与群において発現が増加していた. 【結語】ロイコボリンは投与後早期から肝臓の7α-hydroxylaseを介して胆汁酸の生成、分泌を促進し,利胆作用を有する可能性が示された.この新しい薬理作用がロイコボリンの肝機能改善,黄疸改善作用のメカニズムの一つである可能性が示唆された.
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