1.山梨医科大学第1外科にて切除された大腸分化型癌10例、粘液癌10例を用いてRFLP法により癌抑制遺伝子のAPC、P-53およびDCC遺伝子のLss of Heterozygosity(LOH)の有無を検索した。検索可能例における各遺伝子のLOH陽性率は次のとうりであった。 APC: 分化型癌:50.0%、粘液癌:33.3% P-53: 分化型癌:57.1%、粘液癌:33.3% DCC : 分化型癌:50.0%、粘液癌:66.7% 分化型癌と粘液癌の間にLOH陽性率に差はみとめられなかった。 2.同症例に於けるP-53遺伝子変化をモノクローナル抗体を用いた免疫染色にて検討した。この際、染色性を向上させるため標本のオートクレーブ処理を行った。結果は染色率50%以上の症例はは分化型癌60.0%、粘液癌57.1%と差は認められなかった。 臨床病理学的には今回検討した粘液癌の中には腫瘍表層部では分化型癌の組織形態をとり、浸潤部で粘液癌に変化している症例が少なからず認められた。現在まで大腸癌の発生、進展には複数の癌抑制遺伝子変化の蓄積が関与しているといわれているが、浸潤癌における組織型変化(分化型癌から粘液癌へ)という点においては癌抑制遺伝子の特異的な変化は見いだせなかった。
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