研究概要 |
平成7年4月から12月までに、胃全摘とともに脾合併切除を必要とした進行胃癌5症例について、摘出された脾臓から脾細胞を調整し、細胞表面抗原、サイトカイン産生能を中心とした性格解析を行った。胃癌の進行度による脾細胞の表面抗原の有意な差は認められず、平均値ではHLA-DR(+)細胞60%、CD4(+)細胞26%、CD8(+)細胞20%であった。患者脾細胞を血清添加培地で4〜7日間bulkで培養すると、脾腫大をきたしていたstageIVの2症例で脾細胞の活発な増殖が認められ、培養上清中にはIL-2,IFN-γの産生が認められた。増殖した細胞の殆どはCD4(+)CD45RA(-)のヘルパーT細胞であった。一方stageII,stageIII症例では脾細胞の増殖は認められなかった。また脾細胞の増殖を示したstageIV症例で脾細胞をナイロンウ-ルカラムに通してT細胞だけにするとその増殖活性は認められず、ナイロンウ-ル付着細胞が癌抗原を取り込んだ抗原提示細胞として、CD4(+)CD45RA(-)ヘルパーT細胞を刺激、増殖させていることが示唆された。これと同一現象は、患者末梢血T細胞を脾細胞から調整したナイロンウ-ル付着細胞と混合培養しても認められた。 以上、脾腫大をきたした進行胃癌の脾細胞中のナイロンウ-ル付着細胞は癌抗原を取り込んだ抗原提示細胞を豊富に含んでおり、脾細胞中のみならず末梢血リンパ球のCD4(+)分画にも癌特異的ヘルパーT細胞の前駆細胞が存在することが明らかにされた。今後これらの細胞を用いた養子免疫療法の治療効果を検討していく予定である。
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