研究概要 |
【目的】食道扁平上皮癌転移巣の質的診断を目的として、EGFRを標的とする抗体結合鉄磁性造影剤を用いたMRI診断法の検討を行った。 【材料と方法】材料として、EGFR発現食道扁平上皮癌細胞株(TE8)、EGFR非発現肺小細胞癌細胞株(H69)、抗ヒトEGFR murine MoAb(528)、non-spedific murine IgG、強磁性微小鉄粒子Lignosite FML(直径10nm)を用いた。ヌードラット筋層内移植腫瘍モデルを用い、MR装置はBiosecを使用した。Lignosite FML 1ml(10mgFe/ml)をMoAb(528)lmgまたはnon-specific murine IgG 1mgと結合させ、528-Feまたはns-Feをそれぞれ作製した。528-Feとns-FeのTE8に対する抗体活性をELISAで比較した。また528-Feとns-Feの濃度と造影効果との相関を試験管内各種濃度希釈液のT1,T2 timeの測定を行い検討した。10^7個のTE8を6時間528-Feまたはns-Feと接触させた後十分に洗浄し、細胞を2mlのbuffer内で十分にsonicationしてT1,T2 timeの測定を行った。あらかじめ2X10^7個のTE8をヌードラット筋層内に移植して14日間で腫瘍を形成させた後、528-Fe、ns-Feを各々のヌードラットに5mg/Feずつ血管内投与して、MRIを行ない移植腫瘍の造影能を検討した。また、移植腫瘍における微小鉄粒子の取り込みを電顕で検証した。 【結果】528-FeはTE8に対して抗体活性を保持していた。528-Fe、ns-Feは両者とも十分なT2緩和能をもちMRI造影剤としての性質を保持していた。造影剤接触細胞懸濁液では528-Feはns-Feに比してT2 timeの短縮を認めた。TE8移植ヌードラットでは、528-Fe投与群において、移植腫瘍のT2強調画像における造影効果を認めたが、ns-Fe投与群では造影されなかった。一方、H69移植ヌードラットでは、528-Fe、ns-Fe投与群の両群共に移植腫瘍の造影効果を認めなかった。TE8移植ヌードラットの528-Fe投与群において、移植腫瘍細胞における鉄磁性体の取り込みを電顕で認めた。
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