研究概要 |
粘液産生膵腫瘍の悪性度を中心とした細胞特性を明らかにする目的で、本研究を行った。 研究対象とした粘液産生膵腫瘍は当科にて切除した30例。男性19例、女性11例、平均年齢63.7歳。性差、年齢に有意な所見は認めず、血液検査でも特徴的な所見は得られなかった。臨床画像診断では、腹部超音波検査、ERCP,EUSで局在診断は容易であった。しかし著明な癌浸潤を認めた症例を除いて、質的診断は困難であった。病変部位では頭部23病変(1例は重複病変)、体部8病変で、頭部に多かった。臨床病理学的分類では、主膵管型5例、分枝型10例、複合型16例で、主膵管型は、分枝型・複合型に較べより病変が大きく、悪性例が多かった。病理学的には、悪性9例(非浸潤癌1例、微小浸潤癌5例、浸潤癌3例)、良性22例(腺腫17例、過形成5例)で、悪性例は高分化型腺癌であった。病変の広がりの大きさを検討したところ、3.0cm以上の症例で有意に悪性例が多く、主膵管に主病変のあるものは分枝に主病変のあるものより有意に大きくなっていた。臨床的検討では、腫瘍の大きさが、悪性度と相関することが示唆された。 近年癌発生、転移のメカニズムの遺伝子異常についての報告が急増している。従来から指摘されている本腫瘍のmalignant potentialを明らかにするために、臨床的な悪性度と遺伝子異常をKi-ras, p53遺伝子について過形成、腺腫、腺癌の部分で薄切標本を作成し、免疫染色を行うために、昨年度に引き続いて、本年度も研究を継続している。現在パラフィンブロックから標本の作成、染色中である。
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