研究概要 |
胃癌におけるp21の発現とその意義に関する検討を行うため、切除胃癌組織75例の凍結切片を対象とし、p53,p21,cyclinD1,cyclinE,PCNAの各モノクロナール抗体を用いてABC法による免疫組織学的染色およびp21 cDNAよりRNA probeを作製し、24例にIn Situ Hybridization(ISH)を行い、以下の結果を得た。 p53陽性例は22例(29.3%),p21陽性例は16例(21.3%)であり、p53,p21ともに陽性をしめす症例は5例(6.7%)であった。p53のみ陽性を示す症例をA群,p21のみ陽性を示す症例をB群,両者陽性の症例をC群,両者陰性の症例をD群とすると、StageIII,IVの割合はA群88.2%,B群9.1%,C群100%,D群71.4%とB群が他群に比し有意に低率であった。また3年生存率ではA群0%,B群100%,C群40%,D群56.7%で、A群はB,D群に比べ有意に予後不良であり、B群は他群に比べ有意に予後良好であった。cyclinD1陽性例は35例(46.7%),cyclinE陽性例は34例(45.3%)であった。cyclinD1陽性例の割合はA群58.8%,B群54.5%,C群80.0%,D群38.0%,cyclinEはA群64.7%,B群18.2%,C群60.0%,D群45.0%であり、cyclinEはA群に比しB群で有意に低率であった。PCNA Labeling Index(L.I.)はA群74.7±11.5%,B群23.7±13.6%,C群41.9±17.7%,D群32.8±13.6%であり、A群は他群に比し有意に高率であり、B群は他群に比し有意に低率であった。ISHをおこなった24例のうちp21免疫染色陽性11例中10例に細胞質内にRNAの発現を認め、p21免疫染色陰性13例中にも7例のRNA発現を認めた。 以上より、変異p53発現例はPCNA L.Iが高く進行例および予後不良例が多いが、p21発現例はPCNA L.I.およびcyclinE陽性率は低く早期例および予後良好例が多く認められ、p21のcyclinEおよびPCNAを介するDNA合成抑制への関与が示唆された。今後p21は遺伝子治療のターゲットになりうると考えられた。
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