研究概要 |
我々は食道癌患者の所属転移リンパ節に存在する感作リンパ球を培養し、癌特異的CTLの誘導を試みた。前回のHLA A26拘束性キラーT細胞の誘導成功に続き、食道扁平上皮癌特異的HLAC分子拘束性キラーT細胞を誘導樹立した。食道癌患者(HLA Cw0102+)の左噴門部の転移リンパ節より得たリンパ球を、IL-2で40日以上培養し,CTLを誘導した。細胞障害性を^<51>Cr-release assay,IFN-rの定量をELISAなどで検討し、HLA拘束性を検証した。樹立したCTL株は食道扁平上皮癌細胞株に特異性を示し、HLACw0102+癌細胞株のみに細胞障害性が認めた。他組織の扁平上皮癌細胞株などに対する細胞障害能は認めなかった。ELISAでも同様な結果が得られた。本CTLはHLACw0102拘束性である。食道扁平上皮癌において転移リンパ節に癌特異的HLA A26拘束性の他にHLA Cw0102拘束性キラーT細胞が存在する症例が確認され,その認識する癌退縮抗原の解明により今後の臨床応用の可能性が期待される。現在、HLA A26とCw1陽性の癌細胞株よりcDNAライブラリーを作製し、これを発現ベクターに挿入し、抗原性を発現していないEBVをトランスフォームさせ不死化した自己B細胞もしくはキラーT細胞非応答性腫瘍細胞クローンに導入して発現させ、その細胞をターゲットとし、すでに作製したHLA A26とCw1拘束性癌特異キラーT細胞クローンをエフェクターとして用い、その細胞障害性をみることでスクリーニングし、HLA A26とCw1拘束性を示す目的抗原を発現する腫瘍細胞クローンを樹立した。今後、これらのクローンに導入したcDNAをシークエンスし、既知の抗原分子との比較検討を行う予定である。
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