研究概要 |
1.マウス乳癌細胞株(FM3A)へのTNFα遺伝子の導入. 1)TNFα遺伝子はC3H/Heマウスの脾臓より分離したリンパ球をcon-Aにて24時間刺激した後,total RNAを抽出しRT-PCRにて個々の遺伝子を増幅,T-vectorにsubcloningした後,再びRSV-LTRをプロモーターにもつ発現ベクターRSV.5neoにsubcloningし,RSV.5-mTNFを作成した. 2)上記の作成遺伝子をFM3A細胞に電気穿孔法を用いて遺伝子導入を行なった後,G418にて選択,cloningして導入遺伝子の発現レベルをノーザンブロット法,FACS解析,ELISAを用いて評価し,導入遺伝子が高発現を示すクローンFM3A-mTNFを選別した. 2.TNFα導入細胞株(FM3A-mTNF)と親株(FM3A)の比較 1)FM3A-mTNF細胞とFM3A細胞はin vitroでの細胞増殖速度に差は認めなかったが,FACS解析においてFM3A-mTNF細胞は明らかにMHC class I抗原の発現上昇を認めた. 3.TNFα導入細胞株(FM3A-mTNF)のin vivo腫瘍増殖抑制効果とワクチン効果 1)C3H/Heマウスに1x10^6個のFM3A-mTNF細胞とFM3A細胞を皮下接種したところ,FM3A-mTNF細胞を皮下接種したマウスでは明らかに腫瘍増殖抑制効果が認められた. 2)C3H/Heマウスに1x10^6個のFM3A細胞を皮下接種し,その後後8日目から14日目にかけて総計1x10^7個のマイトマイシン処理したFM3A-mTNF細胞を腹腔内に注射したところ,最初に皮下接種した腫瘍の増大速度には変化なく,ワクチン効果は認められなかった. 以上の実験より,癌細胞株にTNFα遺伝子を導入することによりMHC発現増強等による癌免疫応答を賦活できることは確認できたが,ワクチン療法としての効果はさらなる検討を要すると考えられた.
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