研究概要 |
血流抵抗が駆出血流の加速期乱流遷移の程度と相関することを利用して大動脈弁位での各種人工弁の機能評価を行い,以下の結果を得た。 1.各種サイズのStarr-Edwards ball弁, Bjork-Shiley弁, SJM弁,各種生体弁により大動脈弁置換術を施工した症例を研究対象とした。 2. (1)式に示したΔλを加速期乱流遷移の程度を示す指標として上記各症例で求めた。 Δλ=ΔP′/1/2ρU^2・・・(1) ΔP′:上行大動脈圧波形に生じるanacrotic notch部の圧力低下, ρ:血液密度, U:上行大動脈内血流速度 尚、ΔP′とUは通常の心カテ時にmultisensor catheterにより測定した。 3.Δλは同一口径(サイズ)の人工弁ではStarr-Edwards ball弁,生体弁, Bjork-Shiley弁, SJM弁の順に高値を示した。また同一人工弁間ではサイズの小さい程Δλは高値を示した。得られたΔλは0から最大5.01に及び,その平均は0.91±1.37であった。 4.現在、同一種類で同一サイズの人工弁置換を行った場合でも、心拍出量、人工弁と血流のなす角度,大動脈と人工弁の解剖学的関係等各症例毎に人工弁が血流に与える抵抗には大きな団体差がある。特に臨床で血流抵抗の上から人工弁から問題となるのはnarrow aortic root等の小さな大動脈弁論に小口径の人工弁置換を行う場合である。この際、術直後に上記のΔλが算出できれば人工弁が血流抵抗に与える客観的評価が各症例毎に充分な精度で可能となり、本法の臨床的意義は大きいものと思われる。
|