研究概要 |
雑種成犬を用い、GOF全身麻酔下に、開腹し、空腸を露出し約5cm切除し、欠損部は、端々吻合し再建する。頚部正中切開を行い、ついで頚部を正中切開し、頚部気管を8軟骨輪切除する。切除した腸管を生食で洗い、腸液分泌抑制のため、腸管粘膜面を機械的にさっかし、挫滅した。気道内腔保持のため、切除腸管をwooven Dacron人工血管内面に、bFGFを混和させたフィブリン糊を用いて、密着させ、断端は、数ヵ所縫合した。その後、気管切除部の末梢側から、40マクソン糸を用い、膜様部を連続縫合、軟骨部を結節縫合し、気管欠損部を再建した。 以下の3群について検討を行った。 気管再建をしたのみのA群、気管再建部にフィブリン糊を塗布するB群、フィブリン糊に、Na2HPO4溶液で溶解したbFGFを濃度40-200ng/ml、総投与量1-20μg,PH7.3-7.5になるように混和させ、局所投与を行ったC群に分類する。 各々の群で、術直後、7日目、14日目に気管支鏡下に、レーザードップラー血流計を用いて、代用気管吻合部、代用気管中心部の粘膜血流量を測定した。この実験により、代用気管移植後の気管粘膜血流量の定量的評価を行った。 第2実験として、A.B.C各々の群で7日目に、胸部大動脈より造影剤を注入し、その後代用気管移植部の血流を軟線撮影装置(Softex)を用いて評価した。14日目にも同様に行った。 第3実験として、7日目、または14日目に犠牲死させ、代用気管移植部を肉眼的に観察するとともに、創傷治癒過程、血管新生等について病理組織学的検討を行った。 気管吻合部粘膜血流量では、7、14日目ともに、C>B>A群の順に血流改善を認めた。Softexによる検討でも同様であった。病理学的検討では、A,B群では、人工血管内に、腸管粘膜組織は残存していなかったのに比し、C群では、腸管粘膜組織が島状に残存しており、新生血管も認めた。 以上より、bFGFとwooven Dacron人工血管、自家遊離腸管を用いた代用気管移植法の有効性が示唆された。
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