研究概要 |
齧歯類における短時間の脳虚血後の海馬CA1領域の遅発性神経細胞死のモデルでは神経細胞死の組織像は典型的なネクローシスとは異なっており、その細胞死の課程において神経系のprogrammed cell deathと共通の経路をたどる可能性が考えられる。神経系のprogrammed cell deathのモデルでは、cell cycle関連遺伝子であるcyclin D1の発現が増加し、cell cycle関連遺伝子のバランスが変化することが細胞死と関連あるという報告がある。遅発性神経細胞死の際にもこれらのバランスの変化が神経際死に関与しているのかを調べるために、砂ネズミの5分間両側頚動脈閉塞モデルを用いてcell cycle関連遺伝子であるcyclin D1, cyclin D2, cyclin D3,及び、cdk4, cdk5の発現の変化をノーザンブロッティングで解析した。麻酔下に砂ネズミの両側内頚動脈を5分間閉塞、再開通し、一過性脳虚血をモデルを作成した。虚血後、1.5時間、3時間、6時間、12時間、24時間後にネズミをsacrificeし、脳を取り出し海馬を摘出して、mRNAを抽出した。cyclin D1、cyclin D2、cyclin D3、及び、cdk4、cdk5の各プローブは合成ologonucleotide primerを用いてRT-PCRで作成し、DNAシークエンスを読んで確認した。10ug/laneのtotal mRNAを電気泳動し、cell cycle関連遺伝子のprobeを用いてノーザンブロッティングを行った。虚血後24時間後までにはcell cycle関連遺伝子であるcyclin D1、cyclin D2、cyclin D3、及び、cdk4、cdk5のmRNA発現に有意な変化は認められないことがわかった。cell cycle関連遺伝子の発現の変化は頸部交感神経節のprimary cultureを用いた神経系のprogrammed cell deathのモデルに特異的な現象なのかもしれない。それ以外のアポトーシス関連遺伝子の発現の変化が遅発性神経細胞死に関係している可能性があるので、今後さらにそこれらの遺伝子の発現の変化も調べる予定である。
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