研究概要 |
神経膠腫は未だ治療成績が極めて不良な悪性新生物であるが、この原因としては神経膠腫組織の局所血流が低く薬剤到達性が悪いこと、神経膠腫細胞が低酸素状態で放射線感受性が低いことが挙げられる。本研究の課題はNitric Oxide(NO)の神経膠腫組織血流量の調節機構を解明することであるが、このことを研究する前段階として、まず培養神経膠腫細胞の増殖と放射線感受性におよぼすNitric Oxide(NO)の作用を検討し、ついで神経膠腫組織血流に与えるNOの作用を検討した。 培養神経膠腫細胞株であるT98G,、U87、C6細胞の培地中にNO発生剤を投与すると濃度依存性に培地上清液中のNO濃度は増加し、細胞増殖は抑制された。この細胞増殖抑制作用は、NO消去作用のある還元型牛ヘモグロビンの前投与によって著しく減弱した。すなわちNO発生剤によるグリオーマ細胞の増殖抑制作用は、NOそのものの作用であることが示唆された。次にC6細胞のコロニー形成法を用いてNO発生剤の放射線感受性におよぼす影響を検討したところ、NO発生剤は濃度依存性にC6細胞の放射性感受性を増強した。ついで、ラットC6神経膠腫細胞株をラット大脳基底核に半定位的に移植し1週間後に水素クリアランス法にて腫瘍組織の血流量を測定した。NO発生剤の静脈内投与によって、直後から腫瘍内組織血流量は増加し、この変化は反対側正常大脳皮質に比べ有意であった。すなわちNO発生剤には、神経膠腫組織の血流を増加させる作用が認められた。 今後、神経腫瘍移植ラットモデルを用いて放射線・化学療法を行い、生存曲線におよぼすNO発生剤の影響を検討し、NOが補助治療の成績を向上させうるか否かについて検討する予定である。
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