1.神経膠腫(特に星細胞腫)においてサイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK4l)遺伝子の相同的欠失が高頻度に認められた。特に悪性神経膠腫においては41%の割合で相同的欠失を認め、比較的良性の神経膠腫では20%に相同的欠失を認めるに過ぎなかった。また同じ悪性脳腫瘍でも髄芽腫においては相同的欠失は全く認められなかった。このことより、悪性神経膠腫の発生に細胞周期関連因子であるサイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK4l)の異常が関わってくることが強く示唆された。 2.サイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK4l)遺伝子の相同的欠失を認めた群ではサイクリンD1の過剰発現が疑われたのに対して、サイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK4l)の相同的欠失を認めなかった群ではサイクリンD1の発現を認めなかった。このことは悪性神経膠腫の発生にサイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK4l)が強く関わっていると同時にその関連物質であるサイクリンD1の異常が関連している可能性を示すと考えられた。 以上より悪性神経膠腫の発生には細胞周期G1関連遺伝子群の異常が深く関わっていることが示唆され、次の研究ステップとしてベクターを用いて細胞周期調節遺伝子を脳腫瘍細胞において細胞周期抑制的に発現させる実験戦略を検討中である。
|