研究概要 |
ラット虚血モデルにおける^<123>I-labelled DAGを用いた基礎実験 リン脂質代謝は脳虚血における生体膜の混乱に密接に関与している。Iodine-123-labelled diacylglycerol analog,(1-(15-(4-iodine-123-iodophenyl)-pentadecanoyl)-2-stearoyl-rac-glycerol)(^<123>I-labelled DAG)を用いて脳内脂質代謝をラット中大脳動脈閉塞モデルでの虚血巣を陽性画像として捕らえることを目的とした。経頭蓋的に15分から14日間の閉塞モデルを作製し11-37MBqの^<123>I-labelled DAGを経静脈的に投与した。30分後オートラジオグラムを施行した。ピンホールコリメーターを装着したガンマカメラを用いて生きたラット脳のスキャンを行った。さらに2,3,5-triphenyltetrazolium hyudrochloride(TTC)染色により脳梗塞巣を確認した。梗塞巣において^<123>I-labelled DAGの取り込みは12時間まで軽度低下し、その後6日まで上昇し、その後再度低下した。脳梗塞周囲領域において12時間まではほとんど変化を示さず、5から6日まで上昇し、その後低下した。その他の領域においては変化を示さなかった。脂質分析では^<123>I-labelled DAGはDAG lipaseにより15-(4-iodine-123-iodophenyl)-pentadecanoic acid([^<123>I]IPPA)と^<123>I-labelled phosphatidylcholine(PC)に代謝されていた。ガンマカメラでのスキャンでも虚血巣に高い集積が認められた。虚血初期の^<123>I-labelled DAGの取り込みの変化はDAG lipaseに密接に関係しており、慢性期の^<123>I-labelled DAGの取り込みの上昇は自己融解の過程での神経細胞の崩壊に関与していた。この方法は将来臨床応用できる可能性を秘めている。 人脳虚血例における^<11>C-labelled DAGを用いた臨床応用 イノシトールリン脂質代謝系の活性物質である1,2-[^<11>C]DAG(1-[1-^<11>C]butyry1-2-palmitoyl-rac-glycerol)をヒトに投与し、その代謝回転速度に応じてイノシトールリン脂質として膜に貯留する放射能量を単位時間当りにPETにより体外測定した。断層面はorbitomeatal lineと上方平行に1.5cm間隔で設定した。これらの断層面はPET測定前に行うCT測定時の設定と同じにした。11位炭素標識DAGは5%ヒト血清アルブミン溶液に溶解した。[^<11>C]DAG(20mCi/50kg)を静注後、ポジトロンカメラを用いて動的な測定を行った。正常人においてprefrontal areaなどassociation cortexでの取り込みが上昇しており、左右半球の優位性については右半球の優位性が高い例が多かった。虚血慢性期症例において虚血側の血流低下の部位において、むしろ^<11>C-labelled DAGの取り込みが高く血流量と解離した結果が得られた。高次脳機能やリハビリテーションとの関係が示唆される。
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