研究概要 |
今年度は,Mn^<++>・DAB混合溶液がsuperoxide anion(O_2^-・)と特異的に反応しosmiophilic polymerを形成する新しいフリーラジカル検出法に着目し,遅発性VSを誘発したイヌクモ膜下出血モデルにて、攣縮血管周囲のO_2^-・の局在を明らかにした. 実験には,クモ膜下出血を誘発させたbeagle成犬14頭を用いた.Mn^<++>/DAB灌流群(n=6),Mn^<++>/DAB/SOD灌流群(n=4),灌流溶液よりMn^<++>(n=2)/DAB(n=2)を除いた灌流群の各4群に分け実験を行った.自家血注入後2日目及び7日目の各時点にて脳血管撮影による血管攣縮を確認した後,各群の動物を各灌流溶液30ml/15分で点滴脳槽灌流した.さらに,O_2^-・反応産物とFe^<++>及びFe^<+++>との共存を調べるため,Mn^<++>/DAB灌流群の標本を同時にターンブル青染色/ベルリン青染色した. Mn^<++>/DAB灌流群において,自家血注入後2日目では,クモ膜下腔に注入された変性赤血球の周囲と,クモ膜下腔に浸潤しているマクロファージ/好中球の細胞質内及び隣接部位に茶褐色微細顆粒状のO_2^-・反応産物が観察された.自家血注入後7日目では,基本的に注入後2日目と反応産物の局在及び反応産物量に違いはなかったが,攣縮血管壁外膜に浸潤したマクロファージに隣接して僅かなO_2^-・反応産物が観察された.これらO_2^-・反応産物は,Mn^<++>/DAB/SOD灌流群では観察されなかった.同様に,Mn^<++>またはDABを除いた灌流溶液群においても同様の結果を得た.Mn^<++>/DAB灌流群の自家血注入後2及び7日目の標本で,同時にFe^<++>を染め出すターンブル青染色,Fe^<+++>を染め出すベルリン青染色を行った結果,攣縮動脈周囲でO_2^-・反応産物とFe^<++>/Fe^<+++>の共存像が観察された.今回の検討より,実験的遅発性脳血管攣縮病態下の攣縮血管周囲(クモ膜下腔)でO_2^-・が少なくとも自家血注入後2日目そして7日目の各時点にて産出されていることをin situで直接証明した.以上,今回の検討は,脳血管攣縮の発生メカニズムにおけるフリーラジカルの関与を改めて支持するデータと考えている.
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