グルタミン脱炭素酵素(GAD)は、グルタミン酸からγアミノ酪酸(GABA)を生成する酵素であり、中枢神経系において抑制性神経伝達物質であるGABAニューロンに存在する。GADにはGAD65とGAD67の2種(分子量が65kDaと67kDa)があるが、申請者はシナプスへの局在がより明らかなGAD65についてのトランスジェニックマウス作成に際して、まずマウスGAD65 cDNAのクローニングを行なった。マウス脳cDNAライブラリー(λgt10ファージ)よりRT-PCRにて作成した0.3kbpのマウスcDNAをプローブとしてスクリーニングを行い、1.4kbpおよび2.2kbpの2種類のGAD65cDNAクローンを得た。それぞれのクローンについてシークエンスを行いマウスGAD65cDNAの全長の塩基配列(2761bp、585アミノ酸)を決定した。トランスジェニックマウス作成の予備実験として、培養系を用い神経系細胞であるNeuro2aおよび非神経細胞であるCHO細胞にGAD65cDNAをそれぞれトランスフェクトしGAD65発現株を確立し、GADの細胞内局在およびGABAの生成、分泌に関して検討した。GAD65cDNAによるGABA合成を確認した後、前脳神経細胞に特異的に発現可能なカルモジュリンキナーゼIIαプロモーター(8.5kbp)を有するトランスジェニック用発現ベクター(PNN279)にGAD65cDNAを組み込み、トランスジェニックコンストラクトを作成した。さらにES細胞を用いたキメラマウス作成のために、薬剤耐性遺伝子であるpuromycin N-acetyl transferase gene(pac)を、現在ベクターに組み込み中である。
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