研究概要 |
【目的】今までの私達の結果よりラット大腿神経運動枝・知覚枝を切断縫合後、遠位運動枝のcholine acetyltransferase(CAT)活性が遠位知覚枝のCAT活性より有意に増加した。これは、運動枝内の再生運動神経線維が知覚枝内の再生運動神経線維に比べ選択的に軸索径が増大したか、または再生運動神経数が増加したかをCAT活性とKamovsky染色を用いて検討した。 【方法】実験1:大腿神経を運動枝と知覚枝の分岐部よりやや近位で切断しシリコンチューブで架橋し神経断端間隙が2mmとなるようにする。遠位運動神経・知覚神経を回旋しない群(非回旋群)と180°回旋した群(回旋群)を作成し、術後36,48週(長期例)に遠位運動枝・知覚枝より神経片を採取しCAT活性を放射性同位元素(^<14>C)を用いて計測する。また、Kamovsky染色を行い運動神経軸索数と軸索径を画像処理・解析システムを用いて測定する。 実験2:実験1と同様に分岐部よりやや近位で大腿神経を切断する。近位知覚枝は反転し筋肉内に埋没する。Y字チューブの近位チャンネルに近位運動枝を挿入し遠位2チャンネルにそれぞれ遠位運動枝と遠位知覚枝を挿入する。神経断端間隙は2mmとする。術後4,8,12,24,36,48週に遠位運動枝、知覚枝より神経片を採取し実験1同様にCAT活性測定と運動神経軸索数と軸索径を計測する。 【結果】実験1 非回旋群の運動枝と知覚枝のCAT活性を比較すると術後4、8週では有意差を認めなかったが術後12〜48週では36週を除き運動枝のCAT活性は知覚枝よりも有意に高値を示した。回旋群でもほぼ同様な傾向を示した。正常運動枝内の運動神経軸索数は平均314個であり、非回旋群、回旋群とも継時的に軸索数が増加しており術後24週で運動枝で119(非回旋群)、116(回旋群)、知覚枝で112(非回旋群)、124(回旋群)であり両群とも運動枝と知覚枝間に有意差を認めなかった。 実験2に関しては現在実験中である。 【考察】運動枝のCAT活性は知覚枝に比べ継時的に増加しているが、両枝内の運動神経軸索数に差がないことから運動枝内の再生運動神経軸索径が選択的に増大した可能性が示唆された。(第6回日本末梢神経研究会にて発表)
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