線維芽細胞は長期間の培養により瘢痕・ケロイドと類似した組織像を示すことが知られているため、これら培養ヒト線維芽細胞を研究することにより創傷治癒における線維芽細胞の作用機序について検討することができる。上記の目的に対して、我々は培養ヒト皮膚線維芽細胞を単一細胞レベルから、電気生理学的手法を用いた実験を施行した。当初の目的である線維芽細胞の培養・増殖は、ほぼ確立し、安定した実験材料の確保ができた。また、ガラス微小電極を用いたPatch Clamp法については、より細胞に対し障害の少ないPerforated Patch Clamp法が技術的に可能となり、安定した実験結果を出せるようになった。その結果、線維芽細胞の静止膜電位は、-30〜-40mVであることが確認された。一方、電流記録による潅流液組成の変化に対する応答では、潅流液のpHを酸性にした場合(pH6.4)、約20pAの内向き電流が観察され、また、アルカリ性にした場合(pH8.4)には約30pAの外向き電流が流れるのが観察された。薬剤投与における応答を見ると、ヒスタミン(10^<-5>mol)投与において25pAの緩徐な内向き電流が観察され、線維芽細胞におけるヒスタミン受容体の存在を確認した。一方、セロトニン(10^<-5>mol)投与によっては電流応答は見られず、セロトニン受容体の存在は確認されなかった。今年度の実験結果は上記に示した如くであるが、ほぼ計画通りの実験が施行でき、得られた結果も満足のいくものであった。今後は現行の実験をさらに発展させ、これらの電流記録を惹起するイオンチャネルの種類の確定と、生じたヒスタミン受容体のタイプを確定し、さらに、瘢痕・ケロイドに有用な治療薬であると考えられる薬剤(TGFα・β、および各ステロイド剤等)でも実験を行い、瘢痕・ケロイド治療に対する臨床応用に発展させる予定である。
|