(1)研究目的:本研究の目的は新生児の創傷治癒を検討することにある。さらに胎児型創傷治癒およびadult型創傷治癒との比較を行うことである。今回はケラチンについての検討を行った。 (2)研究対象および方法: (1)実験動物:Sprague-dawleyラット新生児(生後1〜5日目) (2)創傷治癒モデルの作成:新生児ラットの背部に約1cmの全層皮膚切開創及び直径2mmの全層皮膚欠損創を作成し、この創傷治癒過程を観察する。さらに経時的に組織標本を採取し、切片を作成する。 (3)プローブの作製:ケラチンのm-RNAに対するプローブを作製する。プローブはオリゴヌクレオチドプローブとした。 (4) in situハイブリダイゼーション:作成したプローブを[^<35>S]で標識し、in situハイブリダイゼーションを行う。 (5) expcsure: in situハイブリダイゼーションを行った標本に対してエマルジョンをかけて12日間、暗所保存する。 (6)標本の現像: 12日間、暗所保存した標本を現像する。 (7)写真撮影:暗視野顕微鏡を用いて、写真撮影を行う。 以上の実験より得られた標本で、経時的な変化を比較検討する。さらに胎児の結果やacultの結果と比較検討を行う。 (3)これまでの結果及び考察 これまでは、ケラチンの発現を経時的に検討してきたがどちらのモデルにおいても、創作成後12時間で創周辺に広範囲にK6ケラチンの発現が認められ、その発現は以後創傷治癒に伴って急速に消退していき、10日前後で消失してゆくことがわかった。また消退速度は、2種類のモデルの比較では切開縫合創の方が速いことがわかった。従ってK6ケラチンは創傷治癒の1つのよい指標となることがわかった。 (4)今後の検討課題 今回の研究では、新生児のケラチンの発現のみの検討しかできなかったが、今後はさらに胎児型及びadult型の創傷治癒との比較検討を行っていきたいと考えている。
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