研究概要 |
昭和62年度文部省科学研究費試験研究により既設の靱帯損傷診断ロボットを改良し,切断膝を対象とした多次元の力学機能試験装置を作成した。膝の機構に関する記述および制御アルゴリズムを整理し,GroodおよびSuntayの定義した膝関節座標系に沿って切断膝関節に内外反モーメントをあたえ,そのときの膝の3次元運動挙動を記録した。内側側副靱帯の浅層と深層,および外側側副靱帯を切除する毎に先に記録した運動挙動を再現し,膝関節にあたえた。それぞれの組織の切除前と切除後の6軸力センサの出力の差から,その組織に作用した張力を算出し,緊張パターンを求めた。 その結果,内側側副靱帯の浅層は,伸展位で弛緩し(屈曲0°のとき17N),屈曲位で緊張した(屈曲90°のとき35N)。反対に,内側側副靱帯の深層は,伸展位で緊張し(屈曲0°のとき24N),屈曲位で弛緩した(屈曲90°のとき11N)。外側側副靱帯は,屈曲姿位に関係なく常時緊張した(屈曲0°〜90°のとき34〜44N)。以上から,膝関節に内外反モーメントがあたえられたときに,内側側副靱帯の緊張パターンが膝の屈曲角度に依存すること,外側側副靱帯の緊張パターンは屈曲角度に依存しないことが分かった。それぞれの結果を基に,側副靱帯損傷のメカニズムの解明,損傷診断の精度向上が可能になると考えられた。
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