研究概要 |
生体に有害なバナジウムを含まない新しい人工素材用チタン合金として、先に開発したT1-5Al-3Mo-4Zr α-β型新チタン合金を用い、直径3mm長さ10mmの円筒形のテストピースを作製した(コントロール群)。この表面にHydoxy apatiteコーティングを施したもの(HA群)。β-TCPコーティングを施したもの(β-TCP群)。をそれぞれ作製した。これらを成熟ビ-グル犬大腿骨骨幹部中央に作製した骨孔にtrans corticalに挿入した。術後2,4,8,12週で屠殺し、大腿骨を摘出、包埋した後50-80μmの切片を作製し次の2項目につき観察した。 1)Contact micro radiographyを撮影し、テストピース周囲の骨新生、テストピースへの骨の接触及びfibrous tissueの介在の有無につき検索した。 2)SEMにより、骨とインプラントの界面を観察した。 結果:2週、4週のコントロール群では、インプラント表面の一部に骨が直接接する所見を認めたものの、インプラント周囲における骨新生は緩徐であり多くの部位ではインプラントと新生骨の間にfibrous tissueの介在を認めた。これに対しHA,β-TCP群では、術後2週からインプラント周囲で旺盛な骨新生を認め、厚いosteoidと胞体の豊富なosteoblastが多く認められ、活発なbone formationが示唆された。インプラント表面に直接接する骨の面積も経時的に増加し、4週ではHA群、β-TCP群ともに、インプラント表面の半分以上をしめるに至っていた。コントロール群にみられたようなfibrous tissueの介在は明らかに少なかった。しかし、HA群,β-TCP群の間で骨新生の程度や、骨に接するインプラントの面積には明らかな差は認められなかった。現在、8週、12週の動物を屠殺、標本作製にあたっており、これらについても同様の検索を行い、とくにこれらの時期においては、SEMを用いて骨-インプラント間のHA,β-TCPコーティングについて、コーティングの溶解、剥離、厚さの変化などにつき観察し、HA,β-TCP群の差の有無につき検討していく。
|