研究概要 |
剖検例10例のL4/L5椎間板、平均年齢73歳と下肢痛、腰痛がなく運動麻痺を主症状とする手術例10例のL4/L5椎間板、平均年齢47歳を実験に使用した。剖検例10例の死因は全例悪性腫瘍であり、全例何らかの化学療法をうけていた。死亡してから検体を採取するまで平均3-4時間を要した。 剖検例の椎間板組織から各種サイトカインは検出されなかった。また免疫組織染色を行ったところIL-1α、IL-1β、IL-6,TNF-αを産生している細胞は確認できなかった。これらの細胞は線維芽細胞様の形態であった。また、これらの組織を培養し各種サイトカインの産生を検討したがIL-1α、IL-1β、IL-6,TNF-αの産生を認めた。また細胞培養をおこないIL-1αを添加したところ濃度依存性のプロスタグランジンE2産生を確認できた。またこれらのサイトカインおよびプロスタグランジンE2産生はベタメサゾンの投与によって著しく抑制された。 手術例の椎間板ヘルニア組織からはIL-1α、IL-1β、IL-6,TNF-αが検出された。また免疫組織染色においてこれらのサイトカインを産生している細胞を確認した。組織培養では、剖検例と同様IL-1α、IL-1β、IL-6,TNF-αの産生を認め、これらはベタメサゾンの添加によって著しく抑制された。またIL-1αの添加で濃度依存性のプロスタグランジンE2産生を確認できた。 剖検例について各種サイトカインが検出されなかった事、免疫組織染色で染色されなかった理由として検体を採取するまでの時間が長かったこと、年齢がヘルニア例に比し高かった事、化学療法の影響などが考えられる。また組織、細胞培養では両群ともサイトカインの産生を認めたが、痛みを主症状とするヘルニア例の値と統計学上の差は認めなかった。以上より椎間板細胞は本来各種サイトカインを産生する能力を有しており、IL-1αの産生量の変化でプロスタグランジンE2産生は制御されるものと考えられる。
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