研究概要 |
ラット脳より抽出したmRNAを注入したアフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus laevis oocyte)を用いて、揮発性麻酔薬の細胞内二次情報伝達系に対する影響を検討した。アフリカツメガエルに発現する5-HT_<2C>受容体はイノシトールリン酸(PI)代謝と接合し、アゴニストの結合により、G蛋白質を介してinositol 1,4,5-trisphosphate(IP3)とdiacylglycerol(DG)を生成する。IP3は小胞体からCa^<2+>を放出し、最終的にCa^<2+>依存性Cl^-チャネルを開口させる。このCl^-電流を指標として揮発性麻酔薬の細胞内二次情報伝達系に対する影響、および作用部位の同定のためにIP3およびCa^<2+>を直接細胞内に注入し、誘発されるCl^-電流に対する揮発性麻酔薬の影響を解析した。 これにより、メトキシフルランは5-HTによって誘発される代謝型の細胞内情報伝達系に抑制的に作用することが明らかとなった。細胞内へのIP3,Ca^<2+>注入によって誘発される電流応答はハロタン、イソフルラン、メトキシフルランいずれの濃度によっても変化は認められなかった。要約すると、1)5-HTの濃度-反応曲線は非競合的に抑制される、2)揮発性麻酔薬はIP3およびCa^<2+>の細胞内注入で誘発されるCl^-電流を抑制しない。これらの成績は、揮発性麻酔薬が細胞内のCa^<2+>ストアからのCa^<2+>放出、およびCa^<2+>によるCl^-チャネルの開口のいずれをも抑制しないことを示唆するものである。したがって、揮発性麻酔薬は受容体、G蛋白質、PLCのいずれかの活性過程あるいはそのカップリングを抑制するものと考えられた。
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