我々は麻酔ネコで延髄・疑核外側の網様体の電気的刺激および背側鼻咽頭部の機械的刺激によってしゃっくり様反応を再現性よく誘発できた。今回、我々はこれらの中枢および末梢の誘発部位に逆行性標識物質のコレラ毒を注入した。その後に作成された延髄〜橋の連続横断切片にコレラ毒抗体を用い、標識細胞を染め出して組織学的に検討した。 【対象と方法】自発呼吸する麻酔ネコ2群で、しゃっくり様反応を誘発した。中枢側もしくは末梢側の誘発部位にコレラ毒を注入した後、生存させた。一週間後、灌流固定を行い、脳幹を摘出した。脳幹標本から厚さ40μmの連続横断切片を作成し、免疫組織学的方法で標識細胞を染め出した。 【結果】延髄内の誘発部位へのコレラ毒注入では、標識細胞は縫線核、孤束核、三叉神経脊髄路核、延髄網様体に認められた。背側鼻咽頭部のコレラ毒注入では、疑核と三叉神経運動核に標識細胞は認められた。 【結論】しゃっくりの反射弓は、孤束核→三叉神経脊髄路核→延髄網様体→疑核→横隔神経のpremotor neuronおよび喉頭を支配するmotoneuronから構成されることが示唆された。縫線核はGABA含有細胞を有することから、この反射弓が縫線核からの抑制性入力を受ける可能性も示唆された。しゃっくりの遠心路としては、これまで考えられていた疑核以外に、三叉神経運動核からのmotoneuronも考えられた。これはしゃっくりのとき顎運動(開口)を説明しうると考えられた。
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