研究概要 |
イソフルレンなどの全身麻酔薬は、Ca^<2+>電流の抑制作用を示すことが報告されており、臨床的にも重要な問題であるが、全身麻酔薬が、(a)Ca^<2+>チャネルタンパク質上のある特定部分に作用するのか、(b)細胞質膜に非特異的に作用してCa^<2+>チャネルの性質を変化させるのかは明らかでない。今回我々は、酵素的に分離した心筋単一細胞標本にパッチクランプ法を適用し、Ca^<2+>チャネルに及ぼす全身麻酔薬イソフルレンおよびセボフルレンの作用部位・機序を検討した。 イソフルレン(1.25,2.5,5.0 vol%)およびセボフルレン(2.5,5.0 vol%)はCa^<2+>電流のamplitudeを濃度依存性に抑制した。Ca^<2+>電流の不活性化過程をコンピュータ解析した結果: 1.イソフルレンおよびセボフルレンは、Ca^<2+>電流の不活性化の時定数(τ_f)を減少させた。 2.イソフルレンはCa^<2+>電流の定常状態での不活性化f_∞を過分極側へシフトした。 3.イソフルレンCa^<2+>電流の不活性からの回復を遅延させた。 さらにCa^<2+>電流のコンピュータシミュレーションの結果から、比較的定濃度のイソフルレン(1.25,2.5 vol%)およびセボフルレン(2.5 vol%)によるCa^<2+>電流amplitudeの抑制効果は、不活性化の時定数(τ_f)の変化から説明できることが明らかとなった。したがって心筋においてイソフルレンなどの全身麻酔薬は、細胞膜質膜に非特異的に作用してCa^<2+>チャネルの性質を変化させる可能性が示唆された。しかしながら高濃度のイソフルレン(5.0 vol%)およびセボフルレン(5.0vol%)によるCa^<2+>電流の抑制効果はτ_fのみでは説明できないことから、他の因子(Ca^<2+>チャネルのコンダクタンスなど)の関与が考えられた。
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