研究概要 |
ラットの低酸素性慢性肺高血圧摘出肺血管をもちいて、細胞内cyclic-AMPの上昇を引き起こす薬物の用量作用曲線から、各々の弛緩反応を検討した。 1.イソプロテレノールに対する弛緩反応:コントロールでは、濃度依存性に弛緩反応がみられたが、肺高血圧ラットでは、ほとんど弛緩せず、すべての濃度において、弛緩反応の抑制が認められた。 2.NKH477,forskolinに対する弛緩反応:NKH477について、コントロールにおいては濃度依存性の弛緩反応がみられ、最大弛緩は93%であった。肺高血圧血管でも濃度依存性弛緩反応がみられたが、その程度はコントロールに比較して抑制されており、最大弛緩は72%であった。forskolinについては、コントロールにおいては濃度依存性の弛緩反応がみられたが、肺高血圧血管では弛緩反応は抑制され、最大弛緩は68%で、NKH477と有意差はなかった。 3.Amrinoneに対する弛緩反応:コントロールにおいては低濃度では弛緩反応が起こらなかったが、高濃度では濃度依存性の弛緩反応がみられた。肺高血圧血管では最高濃度ではじめて弛緩反応が引き起こされ、最大弛緩は、コントロール57%、肺高血圧47%と有意差は認められた。 以上のことから、慢性肺高血圧血管でのcyclic-AMPを介する弛緩反応は、ベータ受容体レベルでの障害が強くadenylate cyclase活性化以下のレベルの障害は軽度であること、また、弛緩物質に反応して上昇したcyclic-AMPは、正常血管と比較して減少していることが推定された。
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