[目的] メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は院内感染の原因菌として重要であり、また集中治療医学の領域においても、免疫力の低下した患者には、重症の全身性感染症をひきおこし臨床的に大きな問題である。従ってMRSA感染症迅速診断法の開発を試みる。 [方法] ブドウ球菌のメチシリン耐性遺伝子であるmecAおよびスーパー抗原TSST-1産生に対する遺伝子tstの遺伝子配列より選んだ25-30残基よりなる配列をDNA sythesizerで作成し、側鎖を持ったdeoxyuridineで1残基を置換し、側鎖にALPを結合させることにより酵素標識オリゴヌクレオチドプローブ(Enzyme-labeled Oligonucleotide Probe:ELONP)を作成した。ELONP法は材料としては臨床検体より分離培養された寒天培地上のコロニーおよび患者検体(血液、便、喀痰)を用いた。コロニーおよび患者検体を少量ニトロセルロース膜に塗布し、熱とアルカリ処理にて溶菌し、一本鎖となったDNAを膜に定着させる。これにmecAとtstそれぞれに対するALP標識プローブをhybridizationした後、ALP基質を加えて発色でmecAおよびtstの有無を判定した。 [結果および考察] mecA-ELONPは従来法であるMICと高い相関を示した。また、tst-ELONPは従来法であるラテックス法と高い相関を示した。判定に必要な時間はともに従来法の50%以下であった。したっがてELONPによる高度病原性ブドウ球菌の迅速診断は臨床的価値があると考えられる。
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