生理的状態におけるNitric oxide (NO)の疼痛伝達への関与を調べるためにNO合成酵素阻害剤の一種であるNG-monomethyl-L-arginin acetate (L-NMMA)をクモ膜下腔に投与し、体性痛および内臓痛に対する鎮痛効果を検討した。 【方法】Sprague-Dawley系雄ラットを対象とし、ハロセン麻酔下に腰椎下部からクモ膜下腔カテーテルを留置した。5日間の回復期間の後、感染、麻痺のあるものは除外した。L-NMMA(10、100、300、1000μg/10μl)または生食10μlをクモ膜下腔カテーテルより投与した。体性痛および内臓痛に対する疼痛閾値をL-NMMA投与前と投与後5、10、15、20、30、60、90、120、180分の時点で測定した。体性痛に対する疼痛閾値の測定にはTail flick (TF)試験を、内臓痛に対する疼痛閾値の測定にはColorectal distension (CD)試験を用いた。それぞれの疼痛閾値よりPercent of maximum possible effect (%MPE)を算出し鎮痛効果を検討した。 【結果】L-NMMAのクモ膜下腔投与によりTF閾値、CD閾値ともに軽度上昇し、その最大効果は投与後10-20分にみられた。投与10分後の容量-反応曲線ではTF試験では効果は容量依存性であり、%MPEは1000μgで最大となり45.6%であった。CD試験における%MPEは300μgで最大(34.7%)となりそれ以上の増加は見られなかった。 【結語】脊髄レベルでのNO合成酵素阻害により、体性痛、内臓痛に対し軽度の鎮痛効果が得られた。
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