揮発性麻酔薬間でMACawake/MAC比が異なることが報告されている。これは中枢の自発性活動と侵害刺激に対する受容性へ及ぼす麻酔薬の作用が薬物間で異なるためであるとの仮説を立て、この仮説を実証するために本研究を計画し、実施した。 ネコにおいて、1.3および2.0MACにおける中脳網様体の自発活動抑制を比較するとハロタン(H)が46±17、47±18%、イソフルラン(I)が77±8、79±8%、セボフルラン(S)が70±8、74±11%と、Hの抑制がIおよびSによる抑制よりも弱かった。他方、坐骨神経電気刺激による血圧や中脳網様体電気活動の反応を抑制する作用はIおよびSがHよりも弱かった。すなわち平均血圧の刺激による上昇は、Hでは8±14、3±8mmHg、Iでは29±18、23±10mmHg、Sでは38±27、33±21mmHgであった。中脳網様体神経活動の刺激による増加は非麻酔時レベルを100%とすると、Hでは29±11、19±11%、Iでは35±30、22±13%、Sでは48±51、28±32%であった。この結果は同一MACでは、IおよびSが刺激に対する反応抑制が弱いために、刺激前に中枢をHよりも強く抑制することを示している。 MACawakeをネコで測定したが、測定法が困難であり、臨床における報告と異なる結果となった。現在ラットにおけるrighting reflexの抑制をMACawakeの代替指標として求めている。現段階ではこの比がほぼ臨床におけるMACawake/MAC比に等しい結果が得られつつある。 今後、得られたMACawake(righting reflex抑制)の濃度における中脳網様体自発活動の抑制を3種揮発性麻酔薬間で比較する予定である。この追加実験によって3種薬物間に抑制の程度に差がなければ、われわれの仮説は実証されると思われる
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