本年度は北海道大学医学部泌尿器科において、以下の症例を対象に検討を行った。 1.先天性神経疾患による神経因性膀胱〜二分脊椎、仙骨脂肪腫、脊髄牽引症候群、横断性脊髄炎など12例 2.先天性下部尿路閉塞性疾患〜後部尿道弁、前部病道憩室3例 3.慢性腎不全の乏尿による廃用萎縮性膀胱2例 4.神経学的に機能正常と考えられた対照例(膀胱尿管逆流症)5例 上記の症例について、 1.抗ヒトProtein Gene Product 9.5抗体に対する免疫組織化学染色による膀胱筋層神経分布密度の測定 2.走査電子顕微鏡による膀胱筋層結合組織(主としてコラゲン)の立体構築の解明 を行った。結果として、 1.臨床的に膀胱の伸展性が低下している症例では膀胱筋層のコラゲンが増殖している。 2.膀胱の伸展性が不可逆的な場合には、異常なコラゲンの蓄積が見られ、神経密度が減少している。 3.膀胱の伸展性が可逆的である場合には、正常なコラゲンの蓄積が見られ、神経密度は減少していない。 ことが判明した。この結果より、膀胱の伸展性が低下している症例に対し、生検による病理組織学的検討から膀胱機能の回復を予見できる可能性が示唆された。
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