平滑筋弛緩作用に対する一酸化窒素の関与については、血管平滑筋領域で解明が進んでいる。L-アルギニン由来の一酸化窒素は、内皮細胞由来弛緩因子として、また非アドレナリン非コリン作動性神経のメディエーターとして血管平滑筋弛緩作用を有する。泌尿器科領域においても尿道平滑筋、陰茎海綿体において一酸化窒素合成酵素(NOS)の存在が確認されている。本年度の研究実績として、まず尿管平滑筋組織内の一酸化窒素合成酵素陽性神経の存在をnicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADPH)diaphorase染色、anti-brain-NOS特異的抗体を用い免疫組織染色にて確認した。また、生理実験として尿管平滑筋のmuscle stripsを用いKrebs-Henseleit液中での経壁的電気刺激に対する収縮弛緩反応を調べた。10-^5M guanethidine、2×10-^6Matropine存在下の経壁的電気刺激に対し尿管切片は弛緩反応を示さず、10-^4ML-NGnitrosrginine methylester(NOS inhibitor)、10^2ML-arginine(NO source)の影響も認めなかった。10^4M sodium nitroprusside(NO donor)は電気刺激に関係なく弛緩反応を示した。これより生理実験においては蠕動運動に対するNOの関与は証明されなかった。この結果については、現在投稿中である。次に組織切片よりRNA抽出し、逆転写酵素によりcDNAを合成し、これをNO synthaseのprimerを用いたRT-PCR法にて増幅させることによりその存在を確認するRT-PCR法を尿路の各組織を用い調べた。現在のところ尿路において誘導型NOSは確認されたが神経型NOSは確認されていない。
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