尿道を移殖した場合の栄養血管の新生の状況を確かめるために、ラビットを用いて実験を行った。一担、完全に尿道を切り離した後に、再度尿道欠損部に尿道を還納し、移殖する場合と同様の場合を行った。この実験により陰茎内の血流が十分な状況であれば生着することを確かめた。 次に小児患者の尿道下裂修復術を行ったときに余剰となった陰茎皮膚の増殖のための培養を行った。平法としては、熱傷患者の受傷部の皮膚欠損部に培養して増殖させた皮膚を移殖する治療法があるが、この際行われる培養法を利用した。培養された皮膚は凍結された状態で保存され、37°Cの温浴で融解させた。これをカテーテルの周囲に巻きつけ、尿道に相当する管腔構造を作成することが可能か実験した。培養皮膚はシート状に作成されたものなので、長辺どうしを極細の吸収糸で縫合したが、極めて薄いものであり縫合は困難であり、また組織強度が低いためわずかな張力により破損しやすく、これをそのまま尿道管とするのは平技上難しいと思われた。ただ遊離移殖とする場合の組織は薄いほど周囲組織からの血流状態が良好となるため一概に厚目に培養することにも問題がある。現在は強度を高めた培養皮膚をロール状のまま作成・培養できるよう検討中である。
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