シアル化MUC1ムチンは遠位尿細管、ヘンレ脚、集合管に存在した。腎癌ではhigh gradeなもの、T stageの進んだもの、転移のすでにあるものに多く存在した。また転移巣においても多く存在した。予後についてカップランマイヤー法で調べてみると、シアル化MUC1ムチンが強く染色される腎癌は、されないものに比べ予後が有意に悪かった。Western BlottingではMY1E. 12(シアル化MUC1ムチンに対する抗体)に反応する蛋白は、分子量が450-600Kdと大きく、ムチンであることが確認された。正常では2本バンドが観察されたが、腎癌では1本のバンドになることが多かった。 シアリルルイスXは近位尿細管に存在した。腎癌ではlow gradeなもの、T stageの進んでいないものに多く存在した。また転移巣においては、ほとんど発現していなかった。シアリルルイスXが強く染色される胃癌は、予後が有意に良かった。近位尿細管にあるシアリルルイスXは種々の分子量の蛋白上にあることが分かった。しかし腎癌ではムチンのような大きな分子量上にあることが観察された。 シアル化MUC1ムチンの増加により、癌細胞がお互いに離れやすくなり、また細胞性免疫の影響を受けにくくなるといわれている。腎癌をシアル化MUC1ムチンで染色することにより、予後を推測できる可能性が示唆された。癌細胞表面のシアリルルイスXと血管内皮細胞上のE-selectinを介した接着は、大腸癌の転移の初期において重要であると考えられているが、腎癌においては、ステージの進んだもの、転移巣においてもシアリルルイスXは少なく、転移において重要性は少ないと考えられた。
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