ラット同種心移植における活性酸素消去剤(SOD)の免疫抑制作用について検討した。 (方法)ルイスラットをドナー、ブラウンノルウェーラットをレシピエントとしてOno and Linseyの方法に準じて異所性心移植を行った。Human recombinant superoxide dismutase(SOD)を移植術後陰茎背静脈より10000単位あるいは20000単位静注投与した。graft survivalは心拍を触知することによって判定した。 (結果)SODを投与しなかったコントロール群ではgraft survivalは平均6日であった。SOD10000単位投与群では平均7.5日、SOD20000単位投与群では平均7日であり、コントロール群と差はみとめなかった。以上の結果よりラット同種心移植に於いてSODによる免疫抑制作用(graft survival延長効果)はみとめなかった。 (考察および今後の展望)SODによる免疫抑制作用は、再潅流時の阻血障害が移植片の免疫担当細胞におけるclass II antigen-expressionのupregulationなどにより免疫原性が増強され拒絶反応を引き起こすという仮説に基づき、SODがこの過程を抑制するものとされている。しかし今回の我々の検討ではこのようなSODによる免疫抑制作用は証明し得なかった。酵素抗体法を用いたgraftのantigenPresenting cellのclass II expressionの頻度もコントロール群と差はみとめなかった。SODの作用機序から考えるとSOD単独では明らかなgraft survivalの延長は望めない可能性もあるため、今後SODとサクロスポリンA、あるいはFK506という免疫抑制剤を併用し検討を加える予定である。
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