研究概要 |
正常胎盤組織からtotal RNAを抽出し、oligo (dt) cellulose span columnを用いてpoly (A) +RNAを精製し、Molony murine Leukemia Virus Reverse Transcriptaseにより、cDNAを合成した。それを鋳型としてp53,p16^<INK4>,p15^<INK4B>遺伝子の全コーディング領域が各々含まれるようなPCR primerを用いて遺伝子導入するDNAを作成した。各々のフラグメントは塩基配列が目的のものであることをシークエンスにより確認した。この正しい塩基配列を持ったp53,p16^<INK4>,p15^<INK4B>遺伝子のcDNAフラグメントを制限酵素(XhoI,BamHI)にて切断後、同一の酵素で切断した発現ベクターpMSGへ、T4DNA ligaseにより組み込み、さらに大腸菌へ感染させ大量のDNAを得た。次に癌抑制遺伝子p53およびCDK4inhibitorであるp16^<INK4>,p15^<INK4B>遺伝子の発現が見られない卵巣癌細胞株SKOV-3に上述のcDNAフラグメントをリポフェクチン法により細胞株へ導入し、導入された細胞株のクローンをHAT selectionにて選別中である。現在までに癌抑制遺伝子p53を導入した細胞の100個以上のクローンより導入した遺伝子が正しく発現しているクローンを12株得られた。それらのクローンを用いてp53遺伝子の発現を誘導してやると卵巣癌細胞株の増殖が抑制されることが証明された。この事実から癌抑制遺伝子p53に異常のある卵巣癌ではその機能を正常に戻すことが遺伝子治療に応用できる可能性が証明された。今後これらのクローンを用いて卵巣癌における癌抑制遺伝子p53の機能を詳細に検討すると共にCDK4inhibitorであるp16^<INK4>,p15^<INK4B>遺伝子でもその卵巣癌細胞株における機能解明のためにクローンの選別中である。
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