本研究は、妊娠子宮の頚管内から採取した細胞を用いた、臨床応用可能な遺伝性疾患の新しい出生前診断法の開発を行うことを大きな目標とした。そのために、まず第一に1年間という研究期間内には、これらの細胞から抽出したDNAから胎児の性別診断ができるか否かを明らかにすることを目的とした。 子宮がん検診に準じた採取法で採取した頚管内細胞より、フェノール・クロロホルム抽出にて抽出したDNA中から、Y染色体特異的DNA配列として、男性を決定する遺伝子配列であるSRY領域遺伝子がPCRにて増幅されるか否かを検討した。対象は、合併症のない妊娠8〜12週の正常妊婦50例であった。これらの妊婦のうち18例の頚管内細胞から、SRY領域遺伝子の一部分が同定された。すなわち、本法で50例中18例の胎児が男児と出生前診断された。これに対して、実際の児の性別はその18例中16例が男児、2例が女児であった。また女児と出生前診断された32例中25例が女児、7例が男児であった。以上より、出生前性別診断法としての本法のSensitivityは70%(16/23)、Specificityは93%(25/27)、Positive predictive valueは89%(16/18)、Negative predictive valueは78%(25/32)と考えられた。この結果は、非侵襲的な新しい出生前診断法確立の可能性を示唆する結果と考えられ、現在学術雑誌に投稿準備中である。しかしながら、臨床応用するためにはより精度を高める必要があり、今後研究を続けたいと考えている。 以上のように、本研究は概ね当初の計画どおりに進行することができた。
|