われわれは、着床における妊卵と子宮内膜の相互作用に関与する因子を解析する研究の一環として、子宮内膜の細胞膜脂質の組成を分析した結果、家兎子宮内膜においては着床期に一致して一過性にコレステロール硫酸の含有量が20倍程度増加することを見いだした。さらに、この急激な発現は、合成酵素であるコレステロールスルホトランスフェラーゼ活性の上昇と分解酵素であるコレステロール硫酸スルファターゼ活性の抑制の結果であることも明らかにした。そこで今年度は、これらの現象の生物学的意義を検討する目的で、家兎子宮内膜上皮細胞の不死化細胞株を用いたコレステロール硫酸の機能解析を計画した。これまで、この樹立細胞株において、各種ホルモン、成長因子の添加実験を行い、プロゲステロンの添加によりコレステロール硫酸合成が増加することを確認した。したがって、本細胞株がコレステロール硫酸の機能解析に利用できると判断された。現在、各種細胞外マトリックス上でのこの内膜上皮細胞培養を行い、細胞外マトリックスとコレステロール硫酸の関連の分析を行っている。また、本培養系を着床モデルとして家兎妊卵との相互作用についての実験が進行中である。
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