1.音響化学活性物質の選択 従来、音響化学活性物質として研究が進められてきたのは、おもにヘマトポルフィリンという色素であるが、本研究では、より生体物質に近い物質として、アルブネックス(5%ヒト血清アルブミンを超音波処理した際に生成するアルブミン膜の中に空気を封じ込めたものであり、超音波造影剤でもある)を候補として、音響化学活性物質としての可能性を以下の方法により検討した。 2.方法 脱気水中に固定した厚さ0.03mmのポリエチレンバッグに、SDラットより採血した赤血球、PBS (pH 7.4)、アルブネックス混濁液を2ml注入し、直径24mmの平面型トランスヂューサー(2MHz)により約2μ秒のパルス波を照射してその溶血を測定し、赤血球破壊の程度を検討した。溶血率は、遊離ヘモグロビン量を波長550nmの吸光度より測定して算出した。 3.結果 アルブネックス濃度を変化させると、アルブネックス量が10%まではほぼ比例して溶血が促進され、最大で約4%の溶血が観察された。アルブネックス10%以上では逆に溶血量は低下した。照射するパルス波の数を変化させると、アルブネックスを添加しない場合は溶血はほとんどないのに対して、アルブネックスを添加した場合は約4000発までは溶血率が増加するが、それ以降はパルス数を増やしても溶血は促進されなかった。 4.結論 アルブネックスによる溶血促進力はアルブネックス濃度及び超音波のパルス数に依存するが、最大溶血するような条件でも極微量であり、アルブネックスを超音波パルス波による殺細胞効果は低いものと思われた。
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