本研究は、培養下垂体前葉細胞を用いて、プロラクチン産生細胞の増殖に影響を与える成長因子を検索し、以下の結果を得た。 1 方法および培養実験系の検討 (1)使用培地は、基礎培地にトランスフェリン(10ug/ml)、セレニウム(40nM)、エタノールアミン(30uM)、トリヨードサイロニン(100pM)、エタノール(5mM)を添加したものに、さらに、成長因子の抑制効果を見る時にはインスリンを1ug/ml、促進効果を見る時には10ng/ml添加した無血清培地が最適であることを確認した。 (2)既にプロラクチン産生細胞の増殖を促進および抑制することが知られているエストラジオールおよびドーパミンの作用をこの培養系で調べた。その結果、10nMのエストラジオールは低濃度インスリン存在下でプロラクチン産生細胞の増殖率を約5倍に増加させること、一方、10uMのドーパミンは高濃度インスリン存在下で増殖率を約25%にまで減少させることが確認された。 2 プロラクチン産生細胞の増殖に対する成長因子の効果 epidermal growth factor(EGF)は0.01-10ng/mlの範囲では効果を認めなかった。transforming growth factor(TGF)は1ng/mlの濃度で有意にプロラクチン産生の増殖を抑制した。一方、basic fibroblast growth factor(bFGF)は10nMの濃度でプロラクチン産生細胞の増殖を促進した。なお、activinの効果およびこれら成長因子の作用に対するエストラジオールの効果は現在検討中である。
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