1.Kaufmann療法、GnRH agonist療法、hMG大量療法、GH併用療法などで排卵誘発を試みた高ゴナドトロピン性排卵障害患者10例のうち、2例が排卵し、妊娠が成立した。1例はKaufmann療法中に、もう1例は自然経過観察中に妊娠した。 2.自然経過観察中に妊娠した症例は、RIAでテストステロンが6.10ng/ml(正常値0.3〜0.5ng/ml)と異常高値を示していたにもかかわらず、男性化徴候を認めなかった。エーテル及びメタノールにて抽出した患者血清のテストステロン濃度は0.25ng/mlと正常であり、非抽出法の測定値との間に解離が認められた。そのため、血清中にRIA系に影響を与える物質の存在を疑い、検討を行った。^<125>I-テストステロンと患者血清を混合し、Sephadex G-75でゲル濾過を行った結果、結合物は150KDの単一ピークを形成した。^<125>I-テストステロンと患者血清をincubate後、第2抗体としてヒトIgG、IgM、κ chain、λ chainに対する抗血清を用いて、遠心分離を行った結果、IgG (κ)型の自己抗体の存在が証明された。Scatchard plotにより、テストステロンとの結合定数は0.034×10^3/mol、結合能力は162μ mol/mlであった。この抗体はエストラジオール-17β、プロゲステロン、アルドステロンとの反応性は認めなかった。この抗体が、RIAでは^<125>I-テストステロンと結合し、RIAキットの抗体との結合量が低下するため、見かけ上、検体内のテストステロンが大量に存在するような結果を示すと推定された。他の排卵障害患者55例の血清についても検討を行ったが、抗テストステロン抗体は検出されなかった。
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