女性生殖器における細胞外基質の役割については不明な点が多い。細胞外基質の1つであるテネイシンは性周期に伴って子宮組織内での局在およびその発現量が変化し、また妊娠の着床部位において着床に先立ってその発現量が増加することが報告されている。我々はこのテネイシンに注目し、現在まで妊娠初期子宮におけるテネイシンの遺伝子レベルでの発現を検討してきた。今回はその我々の研究をさらに前進させてマウスの全妊娠中のテネイシンの発現を明らかにし、テネイシンの妊娠への意義および妊娠維持機構について検討し、さらにテネイシンのプロモーター領域の塩基配列を決定することよりテネイシンの発現調節因子を明らかにすることを試みた。 まずBALB/CA系統マウスを用いて妊娠0日から妊娠15日までの妊娠マウスを作成し、それらマウスよりtotal RNAの生成および組織標本の作成を行った。そしてマウステネイシンcDNAよりプローブを作成し、northern blot法およびIn situ hybridization法を行った。northern法ではテネイシンには5.5kbおよび7kbのバリアントが認められ、その発現量は5.5kbバリアントは妊娠0日より徐々に漸減し、一方7kbバリアントは妊娠0日より漸増した。in situ hybridization法から、5.5kbバリアントは子宮内膜下にそして7kbバリアントは子宮筋層に発現が認められ、これらのことからテネイシンが妊娠時の子宮筋層の損傷を抑え、妊娠維持へ強く関与していることが明らかとなった。 次にゲノムDNAライブラリーをマウステネイシンcDNAの5'側のDNA断片にてスクリーニングを行い、陽性クローンを2株採取した。その各々の塩基配列解析を行い、プロモーター領域を約1kbを明らかにした。解析領域にはホルモン反応エレメントやその他の物質のbinding部位を示す塩基配列は認められず、さらなる上流部位の塩基配列の解析が必要であると考えられた。
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